ヤン・オブラク:スロベニア

 

サッカー界では、ゴールキーパーが試合の流れを左右する重要なポジションです。

その中でも、スロベニア出身のヤン・オブラクは、現代サッカーにおける最高の守護神の一人として広く認められています。

アトレティコ・マドリードの絶対的な守護神であり、スロベニア代表のキャプテンでもある彼は、素晴らしいキャリアと独特のプレイスタイルでファンを魅了し続けています。

この記事では、オブラクのキャリアの軌跡と、彼を特別な存在にしているプレイスタイルについて詳しくお伝えします。

キャリアの始まり:スロベニアから世界へ

ヤン・オブラクは1993年1月7日にスロベニアのシュコーフィア・ロカで生まれました。

サッカー選手の父とバスケットボール選手の姉を持つスポーツ一家で育ち、幼い頃からスポーツに親しんでいました。

彼がサッカーのキャリアをスタートさせたのは、地元のクラブであるNKオリンピア・リュブリャナです。

驚くことに、彼は16歳でトップチームデビューを果たし、その若さでベテランのような冷静さと技術を見せつけました。

この早熟な才能が、彼のキャリアの第一歩を象徴しています。

2010年、17歳の時にポルトガルの名門ベンフィカに移籍しました。

これがオブラクのキャリアにおける大きな転機です。

しかし、若手選手としてすぐにレギュラーを獲得するのは難しく、ベンフィカ時代は複数のクラブへのレンタル移籍を経験します。

ベイラ・マル、オリャネンセ、レイリアといったクラブで実戦経験を積み、2012年にはポルトガルリーグで公式戦デビューを果たしました。

この時期は試練の連続でしたが、彼の成長にとって欠かせないステップだったと言えます。

2013-14シーズン、ベンフィカに復帰したオブラクはついにレギュラーとして定着します。

リーグ戦とカップ戦で安定したパフォーマンスを発揮し、チームのリーグ優勝に貢献しました。

この活躍が認められ、2014年にスペインの強豪アトレティコ・マドリードへ移籍します。

移籍金は当時のゴールキーパーとしては破格の約1600万ユーロで、彼への期待の高さがうかがえます。

 

 

アトレティコ・マドリードでの飛躍

アトレティコ・マドリードに加入した当初、オブラクはティボー・クルトワの後継者として注目されました。

しかし、最初のシーズンは控えに甘んじ、出場機会は限られていました。

それでも、2015-16シーズンに正GKの座を掴むと、彼のキャリアは一気に加速します。

このシーズン、オブラクはラ・リーガでわずか18失点という驚異的な記録を達成し、最少失点GKに贈られるサモラ賞を初受賞します。

 

 

以来、2015-16から2018-19シーズンまで4年連続で同賞を獲得し、さらには2020-21シーズンにも受賞するなど、リーガ屈指の守護神としての地位を確立しました。

アトレティコでのオブラクは、堅守速攻を掲げるディエゴ・シメオネ監督の戦術にぴったりと合っています。

2016年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝進出や、2018年のヨーロッパリーグ優勝、そして2020-21シーズンのラ・リーガ制覇など、クラブの成功に大きく貢献しています。

2025年3月時点で、彼はアトレティコで400試合以上に出場し、クラブ史上でも屈指の選手として名を刻んでいます。

国際舞台でも、スロベニア代表としてキャプテンを務めるオブラクは、国の守護神として奮闘しています。

ワールドカップや欧州選手権の本大会出場はまだ果たせていませんが、彼の存在感はチームにとって欠かせないものです。

プレイスタイル:冷静沈着なシュートストッパー

 

オブラクのプレイスタイルを一言で表すなら、「無駄のない完璧主義者」です。

彼の最大の特徴は、驚異的なシュートストップ能力と的確なポジショニングにあります。

身長188cmと、現代のトップGKとしてはそれほど大柄ではありませんが、長い腕と鋭い反射神経を活かしてゴール隅へのシュートにも対応します。

特に1対1の場面での強さは際立っており、相手フォワードに冷静に立ちはだかり、シュートの角度を極限まで狭める技術は世界最高峰と評価されています。

多くの現代GKが足元の技術やビルドアップへの参加を求められる中、オブラクは伝統的な「ゴールを守る」ことに特化したスタイルを貫いています。

例えば、バイエルン・ミュンヘンのマヌエル・ノイアーのような積極的な飛び出しや、マンチェスター・シティのエデルソンのようなパス精度は彼の持ち味ではありません。

その代わり、ゴール前でどっしりと構え、相手のシュートを確実に止めることに全力を注いでいます。

データにもその凄さが表れており、彼は178試合で100回のクリーンシート(無失点試合)を達成しました。

これはノイアー(188試合)やジャンルイジ・ブッフォン(222試合)を上回るペースで、現代GK中最速の記録です。

また、オブラクの冷静さは特筆すべき点です。

16歳でのデビュー時から「頭の中は40歳」と自ら冗談交じりに語るほど、彼は試合中に感情を乱すことがほとんどありません。

このメンタル面の強さが、ミスの少ない安定したパフォーマンスを支えています。

サッカーライターの西部謙司さんは、「オブラクには特殊な能力はないが、基本を丁寧に実行し、動きに無駄がない」と評価します。

腕の使い方やハイボールの処理、さらには無理な体勢でもボールをコントロールする技術が、彼を別格の存在にしているのです。

PK戦での強さも見逃せません。

2020-21シーズンのチャンピオンズリーグで、彼はリヴァプール戦のPK戦で2本のキックをセーブし、チームを勝利に導きました。

このような大舞台での集中力と読みの鋭さも、オブラクの評価を高める要因です。

オブラクの影響力と今後の展望

アトレティコ・マドリードの堅守は、オブラクなしには語れません。

シメオネ監督の守備戦術が機能するのも、彼が最後の砦として信頼されているからです。

市場価値でも、2019年には1億ユーロを記録し、ゴールキーパー史上最高額をマークしました。

2025年現在も、その価値は6000万ユーロ前後と高く、30代に突入した今なおトップレベルを維持しています。

今後、オブラクにはさらなるタイトル獲得と、スロベニア代表での国際大会出場という目標が残されています。

アトレティコとの契約は2028年までとなっており、クラブでのキャリアを全うする可能性も高いです。

一方で、彼ほどの才能を持つ選手を求めるビッグクラブからの関心も絶えません。

チェルシーやマンチェスター・ユナイテッドが過去に興味を示したとの報道もあり、今後の動向が注目されます。

最後に

ヤン・オブラクは、スロベニアの小さな町から世界最高のゴールキーパーの一人へと登り詰めた象徴的な存在です。

堅実なキャリアを築き上げ、冷静さと技術でゴールを守り続ける彼のプレイスタイルは、現代サッカーにおける伝統的なGK像を体現しています。

アトレティコ・マドリードの守護神として、そしてスロベニアの誇りとして、オブラクの物語はまだ終わりを迎えていません。

これからも彼の活躍から目が離せません。

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