ティボ・クルトゥワ(Thibaut Courtois)は、現代サッカー界を代表するゴールキーパーの一人であり、その卓越したスキルと安定感で知られています。
ベルギー出身の彼は、クラブと代表の両方で数々のタイトルを獲得し、キャリアを通じて成長を続けてきました。
この記事では、クルトゥワのキャリアの軌跡と、彼のプレイスタイルの特徴を詳しく探ります。
キャリアの始まり:ゲンクでの飛躍
クルトゥワは1992年5月11日、ベルギーのブリーで生まれました。
幼少期は両親がバレーボール選手だった影響でそのスポーツに親しみましたが、12歳でサッカーに専念することを決意。
地元のビリツェンV.V.で左サイドバックとしてキャリアをスタートし、7歳でKRCゲンクのユースチームに加入すると、そこでゴールキーパーに転向しました。
2009年、16歳と341日という若さでトップチームデビューを果たし、2010-11シーズンには正GKに定着。
ベルギー・プロリーグ優勝に貢献し、最優秀GK賞とゲンクの年間最優秀選手賞を受賞。
40試合で32失点、14クリーンシートという驚異的な成績を残しました。
アトレティコ・マドリードでの成長
2011年、19歳のクルトゥワはイングランドのチェルシーFCに約800万ポンドで移籍。
しかし、即座にスペインのアトレティコ・マドリードへ3年間のレンタル移籍に出されました。
2011-12シーズンにはUEFAヨーロッパリーグでデビューし、決勝でアスレティック・ビルバオを3-0で下して優勝。
翌2012-13シーズンにはレアル・マドリードとのコパ・デル・レイ決勝で勝利し、2013-14シーズンにはラ・リーガ制覇を達成。
3年間で111試合に出場し、2度のサモラ賞(最優秀GK賞)を受賞するなど、スペインでの評価を確立しました。
この時期、彼は高身長を活かしたセービングと冷静な判断力を磨き、世界的な注目を集めました。
チェルシーでの成功
2014年、クルトゥワはチェルシーに復帰し、ペトル・チェフを抑えて正GKの座を獲得。
2014-15シーズンにはプレミアリーグ優勝とリーグカップを制覇し、2016-17シーズンにも再びリーグタイトルを獲得。
2016-17シーズンには16クリーンシートを記録し、ゴールデングローブ賞を受賞しました。
チェルシーでは154試合に出場し、堅守を支える存在として活躍。
しかし、2018年、新監督アントニオ・コンテとの関係悪化や家族の近くにいたいという個人的な理由から移籍を希望し、3500万ポンドでレアル・マドリードへ移籍しました。
レアル・マドリードでの栄光
2018年8月にレアル・マドリードに加入したクルトゥワは、ラ・リーガ史上最も高額なGKとなりました。
初年度の2019-20シーズンには34試合で20失点、17クリーンシートを記録し、サモラ賞を獲得。
チームはラ・リーガ優勝を果たし、彼はアトレティコとレアルの両方でリーグ制覇を経験した稀有な選手となりました。
2021-22シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグ決勝でリヴァプールを1-0で下し、9セーブを記録して大会MVPに選出。
2022年には最優秀GK賞(The Best FIFA Goalkeeper)を受賞し、世界最高のGKとしての地位を確立。
2025年3月時点で、レアルでは210試合以上に出場し、3度のラ・リーガと2度のチャンピオンズリーグ制覇を達成しています。
ベルギー代表での活躍
クルトゥワは2011年、19歳でベルギー代表デビューを飾り、同国史上最年少の代表GKとなりました。
2014年ワールドカップで初出場し、チームを準々決勝に導く。
2018年ワールドカップではブラジルを破る原動力となり、27セーブを記録してゴールデングローブ賞を受賞。
ベルギーは3位に輝き、彼の国際舞台での評価が急上昇しました。
2025年現在、100キャップを超え、57クリーンシートを記録するなど、ベルギーの守護神として君臨しています。
プレイスタイルの特徴
クルトゥワの最大の武器は、身長2メートルの恵まれた体格です。
この長身を活かし、ゴールエリアを広くカバーし、高いボールやクロスに強く、シュートストップ能力が抜群です。
特に一対一の状況での反応速度と正確なポジショニングは、世界トップクラスと評されます。
2022年のチャンピオンズリーグ決勝での9セーブは、彼の反射神経と集中力の証です。
また、足元の技術も優れており、現代的な「スイーパーキーパー」としての役割を果たします。
レアル・マドリードでは、ビルドアップの起点としてパスをさばき、攻撃の第一歩を担う場面も多いです。
彼のプレイスタイルは冷静さと自信に裏打ちされています。
ペナルティエリア内での統率力が高く、ディフェンスラインとのコミュニケーションも円滑。
2012-13シーズンにアトレティコで記録した1154分間無失点というラ・リーガ記録は、彼の安定感を示す象徴です。
しかし、空中戦でのわずかなミスや、稀に感情的な判断が裏目に出ることも指摘されます。
それでも、キャリアを通じて成長を重ね、ミスを最小限に抑える術を身につけています。
キャリアの試練と克服
クルトゥワのキャリアは順風満帆に見えますが、試練もありました。
2023-24シーズンには膝の前十字靭帯断裂という大怪我を負い、約8カ月間離脱。
しかし、2024年春に復帰し、再びレアルのゴールを守る姿は、彼の精神力とプロ意識の高さを証明しました。
また、チェルシーからレアルへの移籍時には古巣ファンから批判を浴び、「禁断の移籍」と呼ばれたことも。
しかし、彼はピッチ上でのパフォーマンスで評価を覆し、批判を跳ね除けてきました。
まとめ
ティボ・クルトゥワは、ゲンクでの若手時代からアトレティコ、チェルシー、レアル・マドリードとステップアップを続け、世界最高峰のGKへと成長しました。
ベルギー代表でも歴史に名を刻み、クラブと国の両方で輝かしい実績を残しています。
長身を活かしたセービング、足元の技術、冷静な判断力は彼のトレードマークであり、現代サッカーに求められる完璧なGK像を体現しています。
2025年現在32歳と、まだキャリアのピークにあるクルトゥワ。
今後もさらなるタイトル獲得と記録更新が期待される、まさにサッカー界の至宝です。
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