イングランド・プレミアリーグの名門、アーセナルFCは、1886年の創設以来、情熱と革新でサッカー史にその名を刻んできました。
「ガナーズ」の愛称で親しまれるこのクラブは、無敗優勝の伝説や数々のタイトルとともに、ティエリ・アンリやブカヨ・サカといった名選手を輩出しています。
ハーバート・チャップマンからミケル・アルテタまで、時代を超えて進化を続けるアーセナルの物語を、歴史と選手の輝きを通じて紐解きます。
アーセナルFCの歴史
アーセナル・フットボール・クラブ(Arsenal Football Club)は、イングランドのロンドン北部、イズリントンを本拠地とする名門サッカークラブです。
1886年に軍需工場の労働者たちによって「ダイアル・スクエア」として創設され、後に「ウーリッジ・アーセナル」、1914年に現在の「アーセナル」に改称されました。
クラブの愛称「ガナーズ(Gunners)」は、軍需工場に由来し、チームのエンブレムには大砲が描かれています。
ホームスタジアムは2006年からエミレーツ・スタジアム(収容人数60,432人)を使用していますが、それ以前は1913年から2006年までハイベリー・スタジアムを本拠地としていました。
クラブのモットーは「Victoria Concordia Crescit(勝利は調和の中から生まれる)」です。
初期の歴史とリーグ参入
アーセナルは1893年にフットボールリーグに加盟した南イングランド初のクラブで、1904年にファーストディビジョン(現在のプレミアリーグの前身)に昇格しました。
1913年に財政難からハイベリーに移転し、以降一度もトップリーグから降格していません。
これはイングランドのサッカークラブとして最長の記録です。
第一次世界大戦後の1919年、ライバルのトッテナム・ホットスパーを抑えてファーストディビジョンに復帰し、以降トップリーグでの地位を確立しました。
黄金時代:1930年代
アーセナルが初めて全国的な成功を収めたのは1930年代で、伝説的な監督ハーバート・チャップマンの指導の下、クラブは5回のリーグ優勝(1930-31、1932-33、1933-34、1934-35、1937-38)と2回のFAカップ優勝(1930、1936)を達成しました。
チャップマンは戦術の革新や選手のフィットネス管理に力を入れ、現代サッカーの礎を築きました。
また、この時期には「WMフォーメーション」を導入し、攻守のバランスを整えました。
戦後の再興と1970年代
第二次世界大戦後、アーセナルは1947-48と1952-53シーズンにリーグ優勝を果たしましたが、1960年代は低迷期でした。
しかし、1970-71シーズンにはバーティー・ミーの監督の下でリーグとFAカップのダブル(2冠)を達成しました。
これはクラブ史上初の快挙で、1970年代の成功の基盤となりました。
アーセン・ベンゲル時代と無敗優勝
1996年にアーセン・ベンゲルが監督に就任すると、アーセナルは新たな黄金時代を迎えました。
ベンゲルはフランス人選手を中心にチームを再構築し、ティエリ・アンリやパトリック・ヴィエラなどのスター選手を獲得しました。
1998-99と2001-02シーズンにリーグとFAカップのダブルを達成し、2003-04シーズンにはプレミアリーグ史上唯一の無敗優勝を記録しました。
この「インビンシブルズ(無敵)」と呼ばれるチームは、26勝12分0敗という驚異的な成績を残し、現代サッカーの伝説となりました。
ベンゲルは22年間の在任中、3回のリーグ優勝と7回のFAカップ優勝を果たし、クラブの歴史に大きな足跡を残しました。
近年の動向
ベンゲル退任後の2018年以降、アーセナルはウナイ・エメリやミケル・アルテタの下で再建を進めています。
アルテタは2020年に監督に就任し、若手選手を軸にチームを強化しました。
2022-23シーズンにはプレミアリーグで2位となり、タイトル争いに復帰する兆しを見せました。
欧州の舞台では、1999-2000シーズンのUEFAカップ準優勝や2005-06シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ準優勝が最高成績ですが、近年はチャンピオンズリーグでの成功を目指しています。
主な所属選手
アーセナルは数多くの名選手を輩出してきました。
以下は、クラブの歴史を彩った代表的な選手たちです。
歴史的な名選手
ティエリ・アンリ(Thierry Henry, 1999-2007, 2012)
アーセナルの歴代最多得点者(228ゴール)です。
スピード、テクニック、決定力を兼ね備えたストライカーで、2003-04シーズンの無敗優勝の立役者でした。
プレミアリーグ得点王を4度獲得し、2002年と2003年にPFA年間最優秀選手に選ばれました。
ファン投票でも「歴代最高のアーセナル選手」に選ばれることが多いです。
パトリック・ヴィエラ(Patrick Vieira, 1996-2005)
強靭なフィジカルとリーダーシップを持つミッドフィールダーです。
ベンゲル時代の中盤の要として無敗優勝に貢献しました。
キャプテンとしてチームを牽引し、ライバルのマンチェスター・ユナイテッドとの激しい対戦で知られています。
トニー・アダムス(Tony Adams, 1983-2002)
「ミスター・アーセナル」と呼ばれる伝説的ディフェンダーです。
クラブ一筋のキャリアで722試合に出場し、4回のリーグ優勝と3回のFAカップ優勝に貢献しました。
守備の要であり、キャプテンとしてのリーダーシップは今も語り継がれています。
デニス・ベルカンプ(Dennis Bergkamp, 1995-2006)
オランダ出身の天才的フォワードです。
芸術的なタッチとパスで「アイスマン」の愛称を持ちます。
アンリとのコンビネーションは破壊的で、3回のリーグ優勝と4回のFAカップ優勝に貢献しました。
近年の注目選手
ブカヨ・サカ(Bukayo Saka, 2018-)
アーセナルのアカデミー出身のウィンガーです。
スピードとドリブルで攻撃を牽引し、2022-23シーズンにはプレミアリーグで14ゴール11アシストを記録しました。
イングランド代表としても活躍し、ファンから「アーセナルの未来」と期待されています。
マルティン・ウーデゴール(Martin Ødegaard, 2021-)
ノルウェー出身のキャプテンです。
優れたゲームメイクと得点力で中盤を支配します。
2022-23シーズンには15ゴールを挙げ、アルテタの戦術の要となっています。
ガブリエル・マガリャンイス(Gabriel Magalhães, 2020-)
ブラジル出身のセンターバックです。
堅実な守備と空中戦の強さでディフェンスラインを支えます。
2024-25シーズンも安定したパフォーマンスを見せています。
ダビド・ラヤ(David Raya, 2023-)
スペイン代表のゴールキーパーです。
優れた足元の技術とセービング能力で、2024-25シーズンの好調な守備を支えています。
アーセナルの影響力とサポーター文化
アーセナルのサポーターは「グーナー(Gooners)」と呼ばれ、熱狂的な支持で知られています。
2022-23シーズンからホームゲーム前に演奏される「The Angel (North London Forever)」は、クラブのアンセムとして定着しました。
日本でもフリーアナウンサーの西岡明彦さんや女優の松井玲奈さんなど著名なサポーターがいます。
また、1927年のシェフィールド・ユナイテッド戦はイングランド初のラジオ中継試合、1937年のエキシビションマッチはサッカー史上初のテレビ中継試合として歴史に名を刻みました。
まとめ
アーセナルFCは、創設以来130年以上の歴史を持ち、13回のリーグ優勝、14回のFAカップ優勝(最多記録)など、数々の栄光を誇ります。
ハーバート・チャップマンやアーセン・ベンゲルの革新的な指導の下、ティエリ・アンリやブカヨ・サカといった名選手たちがクラブの遺産を築いてきました。
2024-25シーズンもアルテタの若手中心のチームがタイトルを目指し、ガナーズの新たな歴史が刻まれつつあります。
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