現代のフットボール界において、伝統的な「守備の国」イタリアが生んだ異才であり、センターバックの概念を再定義しているのがアレッサンドロ・バストーニ選手です。
190cmの長身を誇りながら、司令塔のような左足の技術を兼ね備えた彼は、所属するインテル・ミラノとイタリア代表において、攻撃の起点となる「モダン・ディフェンダー」の象徴として君臨しています。
本記事では、アタランタでの育成時代から、インテルでのスクデット(セリエA優勝)獲得、そして2026年現在の立ち位置に至るまで、彼の華麗なるキャリアを詳述します。
育成の名門アタランタからインテルへの抜擢
バストーニ選手のキャリアは、イタリア屈指の育成組織を持つアタランタBCで始まりました。
カザルマッジョーレに生まれた彼は、若くしてその左足の精度と戦術理解度を高く評価され、2016年に弱冠17歳でトップチームデビューを果たします。
その才能にいち早く目をつけたのが名門インテルでした。
2017年に約3,100万ユーロという、当時の若手ディフェンダーとしては破格の移籍金で獲得されます。
アタランタやパルマへの期限付き移籍を通じて実戦経験を積んだ彼は、2019年に満を持してネラッズーリ(インテルの愛称)のスカッドに定着しました。
当時のアントニオ・コンテ監督にその能力を見出されたことが、彼のスターダムへの第一歩となりました。
インテルでの栄光:3バックの左という「特等席」
インテルにおいて、バストーニ選手は3バックの左という独自のポジションで不動の地位を築きました。
2020-21シーズンには、守備の要としてインテルの11年ぶりとなるセリエA制覇に大きく貢献。
さらに2023-24シーズンにも自身二度目となるスクデットを獲得し、名実ともにリーグ最高のディフェンダーとしての地位を確立しました。
彼の真骨頂は、センターバックでありながら積極的に前線へ上がり、高精度のクロスや縦パスで得点を演出する攻撃参加にあります。
守備においても、かつてのレジェンドたちが持っていた「粘り強さ」に現代的な「予測能力」を加え、世界中のFWが最も対戦を嫌がる一人となっています。
アズーリの継承者:キエッリーニから受け継いだバトン
イタリア代表「アズーリ」においても、バストーニ選手は次世代のリーダーとして期待を背負っています。
ユーロ2020(2021年開催)では若手の一人として優勝を経験。
その後、長年代表を支えたジョルジョ・キエッリーニ選手の引退に伴い、左利きのセンターバックという希少な枠を完全に自分のものにしました。
2026年現在、ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督のもとで守備の柱を務めており、北米ワールドカップに向けた欧州予選でも中心的な役割を担っています。
時折、ピッチ上での熱い振る舞いが議論を呼ぶこともありますが、それは勝利に対する強い執念の裏返しであり、イタリア代表の伝統である「不屈の精神」を体現する存在として、サポーターから絶大な支持を得ています。
プレイスタイル:守備職人とマエストロの融合
バストーニ選手のプレイスタイルを語る上で欠かせないのは、その「左足の魔法」です。
最後方から一本のパスで局面を打開する能力は、もはや中盤のプレイヤーの域に達しています。
相手のプレスを恐れずボールを運び、タイミングよくオーバーラップを仕掛ける姿は、現代サッカーにおけるセンターバックの理想形と称されます。
また、身長を活かした空中戦の強さはもちろん、危機察知能力に基づいたカバーリングの速さも一級品です。
単に守るだけでなく、チーム全体の「リズムを作る」ことができるディフェンダーであることが、彼を世界市場価値においてトップクラスに押し上げている理由です。
さらなる高み、そして欧州の頂点へ
2026年、26歳となったバストーニ選手は、キャリアの最盛期を迎えようとしています。
インテルとの契約を2028年まで延長し、クラブの象徴としてキャプテンマークを巻く機会も増えています。
昨季のチャンピオンズリーグでの惜敗を糧に、彼は再び欧州の頂点を目指して戦い続けています。
常に冷静さを保ちながらも、内に秘めた闘志でチームを鼓舞する。
そんな彼の背中は、アタランタの少年時代に夢見た「世界最高のディフェンダー」という目標に、今や最も近い場所にあります。
イタリアの伝統を守りつつ、新たなプレイスタイルを切り拓く彼の物語は、これからも多くの感動をフットボール界に与え続けるでしょう。















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